ご訪問ありがとうございます。こんにゃろうです。
今回の記事は、前回の記事、研究計画書とは?初学者のための基礎の基礎|臨床心理士指定大学院入試対策 の続きとなります。前回は、研究計画書は一体どういうものなのか、そもそも研究って何?などについて書きました。
研究計画書を書いたことのない人にとっては、
よし、だいたい研究計画書のイメージはわかった、と思っても、
でもどうやって書いたらよいかわからない、何から始めたらいいの?という不安が次に出てきますよね。
今回はそんな人に向けて、書いていきたいと思います。
研究テーマを決めるには
研究計画書を書くためにはまずはテーマを決めなくてはいけません。
研究テーマは、最初からバシッと決まるわけではありません。自分の興味関心から紐解いていき、それに関する書籍や論文を読むうちに、だんだんとテーマが絞れてきます。
1、自分の興味関心のあるキーワードを決める
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2、選択したキーワードに関する論文を読んでいく
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3、芋づる式にキーワードを出す
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4、出てきたキーワードで、別の角度からさらに検索しながら論文を読んでいく
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5、図書館へ行ってさらに多くの論文を読んでみる
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6、広がりすぎてしまったら、課題を絞って整理し、もう一度自分の知的好奇心を照らし合わせる
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7、研究テーマ決定
こんな感じでしょうか。研究テーマが絞れたら、もう研究計画書作成の半ば終わったと思ってもよいでしょう。あとは、研究方法を考えて、書き始めるだけですから。
ここまでくるまでには、多くの論文を読まなくてはならないですが、とにかく根気よくがんばりましょう。
ってことで、研究計画書作成のはじめにやることは、研究テーマを決めること
そして、研究テーマを決めるためには、まず自分の興味、関心のあるキーワードをみつけること!ということになります。
ではここから、この手順をひとつずつ丁寧にみていきたいと思います。
1、自分の興味、関心のあるキーワードを決める
これにはいくつかの方法があるかと思いますが、一番のおすすめは、
何故自分が臨床心理士になりたいと思ったか、を深く掘り下げること
研究にはオリジナリティが必要です。自分だからこそできる研究。
オリジナリティのある研究は、その人(研究者)の原点が密接に関わっているからこそできるのだと思います。原点があるからこそ、その研究者は研究を続けることができるし、読んでいる人にビビっとくるような、生々しい面白い知見が生まれるのだと思います。
また自分の原点に関わってなければ、大学院2年間かけてモチベーションを長く続けることは難しくなりますよね。
ってことで自分はどうして臨床心理士になりたかったのか、大学院まで行こうと決めたきっかけは何だったのか、を自問自答することから始めることをおすすめします。
キーワードを最低2つ、みつけよう
自分の興味、関心を掘り下げるには2つの視点が必要です。
①どんな臨床的問題に関心があるか
いじめ、不登校、自殺、虐待、DV etc..
②どんな対象に関心があるか
幼児期?児童期?思春期?青年期? 男性?女性? 本人?家族?
この2つの視点をもてば、最低、キーワードは2つみつけることができるのではないでしょうか。
対象者は、本人じゃなくって「家族」かな。
2、選択したキーワードに関する論文を読んでいく
次に、その2つのキーワードを使って、ネットで論文検索をしていこう。
おすすめのサイトは Cinii Articles-日本の論文を探す(国立情報学研究所)
検索すると、論文がずらっと出てくるので、各論文についているリンク先ボタンから、PDFに飛ぶことができます。
無料で読めるものと有料のものがあるので、最初は無料のものから読んでいきましょう。
無料のもの
- 機関リポジトリ(大学や研究機関が発行しているもの)
- J-stage (国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) が構築しているプラットフォーム)
- DOI (その論文を配布しているページにダイレクトに移動できる)
有料のもの
- 医中誌Web…….医学部などがある大学では大学図書館が契約していることがあるのでその場合、当該大学の大学生は無料で見れる。それ以外の人は、医中誌Webと個人契約(有料)をすることで論文を読むことができる。
※具体的な料金についてはこちらが参考になります。⇒ 医学中央雑誌 料金とお申し込み
リンク先ボタンがないもの
リンク先ボタンがない場合は、ネット上では読めないと判断し、図書館を利用するようにしましょう。(図書館については後述)
3、芋づる式にキーワードを出す
先ほどの2つのキーワードで検索をするとだ~っと論文が出てきますよね。タイトルをだ~っと見ていって、自分にピン!とくるタイトルをみつけたら、リンク先ボタンを開いて読んでいきましょう。
いくつか読んでみると、別のキーワードが出てきませんか?
もし出てこないようならば、元に戻って最初の2つのキーワードで出てきたものを続けて読んでいきましょう。
『発達障害を持つ子どもを育てる母親のレジリエンスおよびソーシャルサポートが育児困難感および抑うつに及ぼす影響について』
『発達障害児の母親の QOL と育児ストレス: 健常児の母親との比較』
ていう論文にピンときた。読んでみたら「育児困難感」「ストレス」「自閉症児」というキーワードが出てきたよ。
4、出てきたキーワードで、別の角度からさらに検索しながら論文を読んでいく
こんちゃんの場合
「発達障害」「親」というキーワードから「育児困難感」「ストレス」「自閉症児」というキーワードが出てきました。
更に、これらのキーワードで検索していきます。これら全部で検索してもよいし、(あまりキーワードが多いと出てこない場合が多い)これらの中からピックアップして2~3ワードで検索していってもよい。
『療育機関に通う自閉症スペクトラム児をもつ母親の育児ストレスに関する研究』
『自閉症児を育てる母親の子育てに対する気持ちとソーシャルサポートとの関連』
『就学前の自閉症児をもつ母親のストレッサーの構造』
なんていう論文がいろいろ出てきた。
このようにして自分の興味関心を軸にして、様々に広げながら論文を読んでいきましょう。
そのうち有料でもどうしても読みたいものが出てきたときには、積極的にお金を払って読んでみましょう。これに使うお金は惜しまないように。
5、図書館へ行ってさらに多くの論文を読んでみよう
図書館では、ネットで見れない論文が沢山所蔵されているので、図書館へも行ってみましょう。
大学図書館を利用する
あなたが大学生ならば、自分の大学図書館で探すことができます。最近は大学間で相互に学生が利用できるシステムもあるので、そういうシステムを利用すると他大学の図書館にあるものも閲覧ができます。(所属する大学図書館に個々に確認を。)
大学によっては現大学生じゃなくても、卒業生であれば利用できるところもあるので、個々に確認を。
論文がどこの図書館にあるかを検索するのはこちらでできます。⇒CiNii books
国立国会図書館を利用する
大学生であろうがなかろうが、おすすめは、国立国会図書館です。
行ったことがない人は、一度行ってみることをおすすめします。本当に沢山の論文が置いてあります!!
直接行って、論文を閲覧し、コピーしてもらうことができます(コピー代必要)。
この図書館は、国内で発行された雑誌、学術誌、書籍などすべて収蔵されていて、なんでもある。超おススメです!!
※国立国会図書館の利用法については、こちらの記事に詳しく書いています⇒国立国会図書館の利用法はこれだ!研究計画書の質を100倍アップさせよう!|心理系大学院入試対策
もし遠方にお住まいで直接行けないならば……
●近隣の公立図書館へ行って、そこから、国会図書館に申し込んでもらい、複写を入手することもできます。
●遠隔複写サービスもある(ネットで複写を申し込み、郵送又は宅配便で複写製品を受け取ることができる)
➡詳しくは、国立国会図書館 / 遠隔複写サービス
国立国会図書館オンラインも利用しよう
関心のある論文の「引用文献」をみていくと、この論文読んでみたいという論文がでてくると思います。そんな時は直接、その論文のタイトルを、国立国会図書館オンラインのページで検索してみてください。そこにあれば、国立国会図書館で閲覧できるし、取り寄せも可能です。
ここまでくれば、相当な数の論文が読めているかと思います。
だんだんと、自分が求めているだいたいのテーマ、それに関する過去の知見(先行研究)がわかってくるのではないでしょうか。
6、ここでいったん、課題を整理してみよう
もし、いろんな論文を読んでいて段々と、関心が広がりすぎてしまったら、原点にもどって自分の興味・関心はどこにあったのか、冷静に考えて整理してみましょう。ここでやっと、自分のテーマが絞れるかと思います。
7、研究テーマ決定
テーマが決まったとしても、研究計画書の「タイトル」は、研究計画書が完成してから、最終的に決めるとよいので、ここでは、ざっくりのタイトルとして考えておきましょう。
『高機能自閉症スペクトラム障害児をもつ母親のストレス軽減について』
ってのはどうかなぁ~
研究テーマの選び方 ちょっとしたコツ
以上、だいたいの研究テーマを決めるまでの手順を説明してきましたが、ここで、ちょっとしたコツを。
アタリ論文をみつけよう!
アタリ論文っていうのは、自分がやりたい研究、これだ!どんぴしゃりのものを書いた論文のことです。アタリ論文に出会えれば、作成が本当に手っ取り早くなります!
え?すでに研究されているものをテーマにしてもよいの?と疑問が沸いてくると思いますが、
大学院生が研究するテーマは、そんな大それたテーマじゃなくてよいのです。大学院生は専門家の卵の卵ですよね?そもそも壮大なテーマは期待されていませんし、自分が選んだテーマはすでに誰かに研究されていることがほとんどです。ましてや受験生ともあれば、すでに研究されているものをなぞるだけで精一杯というところもあります。
だから背伸びをせず、すでにある研究論文を少しアレンジする。それでいいのです!!
考察をうまく利用する
アタリ論文を見つけたら、その部分の【考察】を読んでよう。
【考察】では、その論文の限界や今後の課題などが書いてあります。その論文の限界や今後の課題となっているものをうまく自分のテーマにしたりするとよいです。
アタリ論文のテーマを少しずらす
ずらすというのは、焦点を当てるところを少し変えるといった所です。
例えば、こんちゃんの見つけたアタリ論文のテーマが『高機能自閉症スペクトラム障害児をもつ母親のストレス軽減』だとします。
- アレンジ1 「高機能自閉症スペクトラム」を「学習障害児」に変えてみる
- アレンジ2 「母親」を「父親」に変えてみる
- アレンジ3 「ストレス軽減」を「抑うつ傾向」とかにしてみる
- アレンジ4 時期を限定してみる。「子供の就学前における母親のストレス軽減」
- アレンジ5 量的研究法のものを質的研究法にしてみる。その逆もOK(量的研究法と質的研究法のミックス型もあり)
研究テーマを決める際の留意点
ここで留意点。合否にかかわる重要なことなので必ずおさえましょう。
志望する大学院の先生が指導可能な内容かどうか
志望する大学院ー研究テーマには密接な関係があります。
その研究テーマを専門にしている、または、その関連分野を専門にしている先生が志望校にいることを確かめるようにしてください。その大学院で指導できるテーマかどうかわからない場合は大学院説明会などへ行って確認するとよいです。指導できる先生がいなければ、筆記試験でいくら成績がよくても合格することは難しくなります。
このあたりのことはこちらの記事も参考にしてください。⇒効率2倍!臨床心理士指定大学院志望校選びのための情報収
※志望校を選ぶ際に、有名大学などのブランドにこだわりたい方は、少し研究テーマの選び方が違います。これについても、こちらの記事に書いていますので参考にしてください。⇒効率2倍!臨床心理士指定大学院志望校選びのための情報収
その研究は修士課程2年で実現可能な内容かどうか
★何年もかかるような研究は修士課程が修了するまでにはできないです。あくまで2年以内でできるものを。
★多くの費用がかかる研究も現実的ではない。
★研究協力者を見つけられるかどうかも重要。先ほどのこんちゃんの例では対象者は「自閉症児の母親」となります。その対象者は、自分で見つけてこなければなりません。
口述試験(面接試験)で、見つけられるかどうか、聞かれる場合もあります。自分に何らかの人脈があるのならば、OKですがそうでないならば、実現できない、、ということになってしまいます。
また、大学院生が直接何らかの問題をもつクライエントを対象者として取り上げることは倫理的にも問題視されているので、対象者については慎重に考えましょう。
※他、様々な研究計画書についての留意点については(書き方ルール、日本語表現、論旨の展開など)、こちらに詳しく書いています。こちらも併せてお読みください。⇒研究計画書|ありがちなNGパターン10選【絶対保存版】臨床心理士指定大学院入試対策
※面接試験についてはこちらの記事が参考になります⇒【面接対策】知らなきゃ損する!面接で絶対に聞かれる質問とは?|臨床心理士指定大学院入試対策
※研究計画書作成にあたって、個別サポートを受けたい方は⇒初めてでもやればできる!受かる研究計画書完成講座|公認心理師・臨床心理士大学院入試対策
研究法について
以上、研究テーマの選び方の手順やちょっとしたコツについて書いてきました。
最後に研究法について触れたいと思います。
多くの論文を読んでいると、どんな研究法にしていったらよいか掴めてくることでしょう。ただ、あまりに統計学や研究法の基礎について知らなかったりすると、論文を読んでいても、ちんぷんかんぷんということもあると思います。できれば、研究計画書の作成を進めながら、研究法の勉強もするとよいですね。
おすすめ書籍を載せておきます。
おすすめ書籍
本当にわかりやすい。
こちらも初学者におすすめ
以上いかがだったでしょうか。なかなか大変そう。。と思われたかもしれません。
多くの時間と労力を費やし、覚悟のいる研究計画書ですが、この記事を読んで、
なんかできそうかも。。。
と思ってもらえたら嬉しいです。
さて、次の記事は、いよいよ書くにあたっての注意点です。研究計画書の字数制限についても解説しています。
次の記事は↓↓↓
研究計画書|ありがちなNGパターン10選【絶対保存版】臨床心理士指定大学院入試対策