ご訪問ありがとうございます。こんにゃろうです。
そろそろ梅雨のシーズンですね。ジメジメした季節になりますが体調は崩されていないでしょうか。
さて今回は研究計画書についてです。
研究計画書については以下の記事もぜひ参考にしてください。
- 研究計画書ってなんだ?と思う方は⇒研究計画書とは?初学者のための基礎の基礎|臨床心理士指定大学院入試対策
- 研究計画書何から始めてよいかわからないという方は、⇒研究計画書】研究テーマの選び方ー何から始めていいかわからない人へ|臨床心理士指定大学院入試対策
- 論文収集や図書館の利用法がわからないという方は、⇒国立国会図書館の利用法はこれだ!研究計画書の質を100倍アップさせよう!|心理系大学院入試対策
今回の記事は更に、書くにあたっての注意点に特化してまとめてみました。
★内容的なこと
★日本語表現に関すること
★書き方のルールに関すること
に分けて説明していきます。一度作成した後で、チェックリストとしてもぜひお使いください。では早速いきましょう。
ありがちなNGパターンー[内容的なこと]
パターン1:テーマが臨床心理学に関連していない
臨床心理士指定大学院を受けるならば、研究計画は臨床心理学に関連する内容でなければなりません。臨床心理士になるということは専門家になるということです。専門家だというのに、別の内容の研究をしていたら変ですよね。
ありがちなのは、自分の興味関心のみの追求に走っているパターン
- 例)スピリチャル経験が自己高揚感に与える影響
- 例)人気アニメキャラクターと人気教師の特徴との関連
確かに、こういった内容は興味深いテーマだと思いますが、これを明らかにして、
とならないようにしましょう。
臨床心理学は、心理的な苦悩を抱える人を援助し、その抱えている問題の軽減や解消を目指す学問です。
研究計画のテーマは、どのような臨床場面で、どのような人を助けることに役に立つのか、がなくてはいけません。
パターン2:社会的な意義がない
つまり、研究の社会的意義です。
パターン1と重なりますが。心理学が好きで自らの興味や関心を深めることは悪いことではありません。でも研究というからには、「こういうことが面白いから」「こういうことが知りたいから」という自己満足だけであってはいけません。
この研究をすることによって、どのように社会に貢献できるのか、を明確にしましょう。特に臨床的な意義を!
パターン3:論旨が一貫していない
研究計画書の構成は
問題➡目的➡方法(➡仮説)
となっています。(計画書の構成についてはこちらの記事にも書いています。⇒研究計画書とは?初学者のための基礎の基礎|臨床心理士指定大学院入試対策)
この4つの中で一番の軸になるのは「目的」です。その研究は何を知るための研究なのかということです。
「目的」を中心にこの4つに一貫性があることが重要。
ありがちなのは「問題」のところでは先行研究のレビューを書きますが、あれもこれも入れることにによって論旨がぼやけてしまうことがあります。せっかく過去の論文を多く読み、あれもこれも書きたい、という気持ちはわかりますが、「目的」と一貫性がない先行研究は思いきって、ばっさりと切ってしまう潔さが必要です。
一貫性をもつ適切な先行研究のみをしっかりと探し出して埋め込んでいきましょう。
(適切な先行研究を探し出すというのはたとえそれが2-3個であったとしても、生半可な気持ちでは決してできません。多くの論文を読んでこそ、探し出せるのだということを忘れないように。)
パターン4:客観的根拠が示されていない
先行研究のレビューを書く際に、「今までこんな研究がなされてきて、こんなことがわかってきた。」と書いたとしても、それにちゃんとした客観的根拠がなくてはいけません。
その客観的根拠となるものが「引用」となります。
注意!)引用のないものは、剽窃(ひょうせつ)という、先行研究を自分のものとして説明するという違反行為になります。
注意!)引用の書き方にも注意してください。ちゃんと書き方のルールがあるのです。書き方については日本心理学会 執筆・投稿の手引きを参照してください。
例)宮埜(2014)によれば…」「…という(森川,2014)。 」
パターン5:倫理的配慮がなされていない
臨床心理学が取り扱う内容は、人の心の苦悩といったプライバシーに密接に関わる内容になるため、その研究には十分な倫理的配慮がなされていなくてはいけません。
研究協力者には、質問紙調査や半構造化インタビューなど、質問によって、なんらかの不快な思いや過去の辛い体験を思い出させるような負担があってはならないのです。
また参加は強制的なものではなく任意であること、参加途中でもいつでもやめることができること、を伝えるといった配慮も必要です。
こういった研究に関する倫理についてはこちらに詳しく書いていますので、必ず一読することをおすすめします。⇒公益社団法人 日本心理学会倫理規程
研究計画書の中では、特に「方法」の部分で対象者に対する倫理的配慮を記載しておきましょう。自分は研究における倫理をちゃんとわきまえている、というアピールになります。
- 例)回答結果のプライバシーを保護するため、調査協力者に個別に質問紙一式と封筒を渡し、自宅での質問用紙に記入の上、用意された封筒を郵送するという方法を用いる。
- 例)協力者には十分に研究目的を説明し同意を得た上で行う。
といったように明記するとよいです。
パターン6:実現可能性がない
これも超重要です。
- あくまで修士課程2年間でできる研究であること
- 費用がかからないこと
- 協力者が得られること
に留意しましょう。一番実現可能性がある方法は、対象を「大学生」にし、質問紙調査にすることです。
注意)対象者が「大学生」以外ならば、(例えば、IT会社に勤務する会社員100名)その対象者に協力を依頼できる人脈が自分にないといけません。(面接で聞かれることがあります。)
[表現に関すること]
パターン7:主語と述語がかみ合っていない
文章が長くなるとどうしても、主語がどこにかかっているのかわからなくなってきます。
1文をなるべく短くし、正しい日本語に留意しましょう。
必ず、誰か第3者に読んでもらうことを強くお勧めします。こういったことはなかなか自分では気づけないからです。
わかりやすい内容かどうか。また、論旨が一貫しているかなどもチェックしてもらいましょう。
例)近年では, 身体疾患と同様に, 統合失調症をはじめとする精神疾患の早期発見, 早期治療は患者の予後を改善するための重要な要素として注目されているものの, 下寺(2014)によると, 統合失調症は医療へつながるまでに大変な困難をともなう疾患であるため, 発病時の異常の気づきから,医療へつなげるまでの過程において, 患者と日常をともにする家族の在り方が非常に重要となるため,・・・・・・・・
パターン8:口語表現がある
- ✖ ~なのだ。だから~ でも~
- ◎ ~である。それゆえに~ したがって~ しかし~
堅苦しい表現で書きましょう。
- ✖ ~ではないかと感じる。~だと思う。
- ◎ ~と推測される。~と考えられる。(必ずそう推測、そう考えられるに至った根拠を示すこと)
主語は「本研究」にしましょう。
- ✖ 私は~~~~したいと考える
- ◎ 本研究は~~~~~することを目的とする
[書き方のルールに関すること]
先ほども書いたように、書き方については、日本心理学会 執筆・投稿の手引を参照してください。
パターン9: 読点が「、」になっている
上の手引きには、
”心理学研究”では句点はマル(。)を用いる。また読点はカンマ(,)を用いる。
と書いてあります。つまり、読点はカンマ(,)で書きましょう。
例)佐藤(2001)によれば, ソーシャルサポートがストレス軽減に重要な役割を担うことは,
パターン10: 引用文献リストの書き方ルールが守られていない
これについても、上記の『日本心理学会 投稿・執筆の手引き』に詳しく書いてありますので、よく読んでルールに従って書くようにしましょう。引用文献例の見本も載っていますのでぜひ参照してください。細かいことですが、守られていないと心理学論文のルールがわかっていない、とみなされてしまいます。
例)木村 卓也・原 直人(2005).抑うつ尺度 の作成 心理学研究,45,341-346
ありがちなのは、引用文献の並べ方の間違いです。著者の名前のアルファベット順に並べることが決められていますので気を付けましょう。
研究計画書と字数制限
字数制限に引用文献は含まれるのか?
さて、志望校に研究計画書を提出する際、字数制限がありますよね?だいたいは、1000字、1200字、1500字、2000字といった指定が多いです。
その際、引用文献を字数に含む、含まない、が特に大学院側から指示がない場合迷ってしまいますよね?
これについては、目安としては、
・2000字以内(程度)の場合、引用文献は含める。(雑誌に研究論文を投稿する場合は制限字数に文献リストを含めるため、それに準じる。)
・1000字以内(程度)の場合は、含めない。(1000字の場合は、引用文献までを含んでしまえば、研究計画そのものの分量が非常に少なくなってしまうため。)
・字数制限がない場合は、2000字を目安に書く。
また、引用文献は多いほどよいというわけではありません。
「主たる引用文献」として研究計画の内容に重要だと思われる文献のみを挙げるというのもありです。
※自分の場合は1500字と指定された大学院では、制限字数の中に、引用文献を含み、「主たる引用文献」として2つだけ記載しました。
研究計画書は字数が多いほどよい、ということはない。むしろその逆。
字数制限の表現には「程度」「以内」がありますよね。
★例えば「2000字以内」という指示されている場合は、9割以上は書きましょう。ということは1800字~2000字ですね。
★字数制限が「2000字程度」の場合は、+-10%と考えて、1800~2200字と考えてよいでしょう。
ただ、字数が多いほどよい、ということは決してありません。研究計画は中身が重要。論旨が一貫しまとまりがあれば、字数が少なくても評価は高いでしょう。
書式
書式は受験する大学院によっていろいろです。大学院側から指定した用紙に書くように指定されている所もあります。募集要項でしっかりと確認しましょう。
おすすめ書籍
研究計画書作成に愛用した参考書。実際の合格した研究計画書も載っている。統計の知識も載っており、大学院に入学してからも役に立つこと間違いなし。↓↓
ここまでお読みくださりありがとうございます。以上、研究計画書の注意点をまとめてみましたがいかがだったでしょうか。
研究計画書は、自分が臨床心理士になってからやりたいこと、携わっていきたい臨床的問題など、自分の職業アイデンティティにも深く関わるものです。作成に苦しみは伴いますが、大学院に合格するためにも、腹をくくって挑んでください。ぜひこの山を乗り越えて合格を手にして下さい。
研究計画書作成にあたって、個別サポートを受けたい方はこちらをどうぞ⇒初めてでもやればできる!受かる研究計画書完成講座|公認心理師・臨床心理士大学院入試対策
さて、次回は、放送大学大学院の過去問から過去問分析をしていきます。
次の記事は↓↓
知能検査を行う際の留意点とは?【放送大学大学院入試対策】臨床心理士指定大学院入試対策