ご訪問ありがとうございます。こんにゃろうです。
またまた久しぶりの更新となってしまいましたが、今回も受験に役立てるものを書いていきたいと思います。
さて今日とりあげるのは、放送大学大学院の過去問から。
子どもに知能検査を実施する際の留意点について述べなさい。(放送大学大学院 2012年度)
この問題を考えていきます。
知能検査…..
最近では、学習障害、ADHDなどの発達障害への関心が急速に強まっていますね。そのため、発達障害ではないか?と疑い心理検査を求める人が非常に増えてきています。特に、認知の凸凹を測定する知能検査のニーズが急速に高まっています。代表的なものがウェクスラー式知能検査のWAIS(成人用)WISC(児童用)という検査です。
この傾向はやや過剰になってきている気が個人的にはしますが、この傾向はこれからもますます強まってくると予想され、心理士となるためには、心理検査の技術を身に着けることは必須の必須。
知能検査についての基本的知識は必ずと言っていいほど受験頻出問題となってくることが予想されますので、しっかりと押さえておきましょう。
※具体的な知能検査を問われる事例問題についてはこちらの記事にも書いていますので参考にしてください。⇒論述対策】事例問題を斬る!何故事例問題は難しいのか?|臨床心理士指定大学院入試対策
では、まず知能検査の位置づけについておさえておきましょう。
知能検査は何のために行うのか?
知能検査の実施は、臨床心理士の4つの専門業務のうち、臨床心理査定の中に入ります(4つの専門業務については詳しくはこちら⇒臨床心理士とは?という質問に5分で完璧に答えてみる)
臨床心理査定とは、クライエントの抱える問題がどういう要因でおきているのか、その全体像を理解するための作業過程です。
そして査定は ⑴面接法⑵観察法⑶心理検査法 とわかれ、⑶の心理検査法は、更にパーソナリティ検査と知能検査に分かれています。
例えば、授業中じっと座っていられなくて困っている子どもがいるとして、どうしてそうなってしまうのか、と周囲は頭を悩ませます。
じゃあ知能検査をして、その子の能力の特徴(得意不得意)をとらえてみよう。そうすることで、授業中じっと座ってられない原因がわかるかもしれない。原因がわかれば、学校や家庭で、具体的にどうその子に関わっていけばよいのか、ヒントが得られるかもしれない、といった流れで検査を受ける場合が多いのです。
つまり、知能検査は、クライエントの抱える問題の背景要因を理解するするために行うものです。
※注 発達障害かどうかの医学的診断は、知能検査だけでなく、生育歴や環境など他の様々な情報から総合的に診断されるもので、知能検査の結果だけから診断するものではありません。
解答のポイント
さて、この問題、実施する際の留意点を求められていますが、
解答のポイントとしては、
大きく臨床心理査定という視点から、なんのために検査をするのかという知能検査の目的や意義を捉えた上で、留意点を述べるのがよりよい解答となるポイントだと思われます。
そして、ここで書かれている「知能検査」とは、代表的なものとして挙げられるのは
- ビネー式知能検査
- ウェクスラー式知能検査
の2つです。
解答の際にはこれらの知能検査を念頭において答えるべきでしょう。
※今回は、実施における留意点を問われていますが、フィードバックにおける留意点もとても大切です。受験で聞かれる可能性は大と思われますので、そちらも併せて以下にまとめました。必読です。
実施における留意点
留意点は4つ
① 目的に合った検査の選択
検査を受けるということは、必ずその目的があります。受検者には主訴(困っていること)がまずあって、その背景要因をさぐるために行います(査定という視点)。なので検査で測ろうとしているものが何であるのか、それが受検者の目的にあっているのかを見極め、検査を選択すること。
例)
- トータル的に知的発達の遅れを捉えたい場合⇒田中ビネー知能検査
- 偏った能力を相対的に捉えたい場合⇒ウェクスラー式知能検査、K-ABC
- 情報処理、認知過程の特徴を捉えたい場合⇒ITPA(言語学習能力診断検査)など
ウェクスラー式知能検査には補助検査というものがあります。この補助検査の選択においても、目的と合わせて、受検者の負担にならないように配慮すること。
② インフォームドコンセント
しかし、いくら援助側が、心理検査がこの子どもに必要だと思ったとしても、実際に受けるかどうかを決めるのは、その子供と保護者です。
なぜ知能検査の実施が望ましいのか、受けることで何がわかるのか、今後の成長にどう役立つのか、負担はないのか、あったとしてもどの程度なのか等、メリットもデメリットも両方説明することは、援助側の義務ですね。
これらのことをすべて説明し、受ける側が納得した上で実施をすること。
③ 子どもの持っている能力を充分に発揮できるような配慮
さて同意が得られて、せっかく検査をやったとしても、受検者の力がきちんと測れていなかったとしたら、、、どうでしょう?何のために検査をしたのかわからなくなってしまいますよね。
きちんとした妥当な検査結果を得るためには、検査者と受検者の間にラポールが形成されていることが重要。一生懸命取り組もうという意欲が湧くような信頼関係を形成した上で行うこと。
他にも、集中を損なわないような検査室の環境づくり、検査者がその検査道具や実施手続きに精通している事にも十分配慮すること。
④ 行動観察をすることの重要性
結果の解釈は、得られた数値だけでなく、検査時の行動観察、背景情報などもあわせて総合的に理解していきます。
特に、検査時の行動観察から見えてくるものは非常に多いです。
例)慣れない場所で緊張が強いか否か、集中は途切れやすいか、どういう時に途切れるか、すぐに諦めてしまうのか粘り強いのか、教示が一度で理解できているか、手先が不器用か。等。
このように総合的なアセスメントをするためにも、実施の際、正確に数値をとっていくことも大事ですが、行動観察を忘れないで行うこと。
また不得意なところにばかり目がいきがちですが、その子供のもっている得意なところ(主訴を補える部分)にも必ずフォーカスしておくこと。
フィードバックにおける留意点
検査結果のフィードバックについても受験で聞かれることが多いと予想されます。おさえておきましょう。
フィードバックとは、インフォームドコンセントの一部。インフォームドコンセントとは医療研究領域から派生した言葉で「説明と合意、および還元義務」の3つの点からなる患者の権利のことです。フィードバックはこの「還元義務」にあたるものですね。
留意点としては4つ。
① わかりやすい言葉で、情報を絞って伝える。
子どもの場合は、主に保護者に対して結果報告を行いますが、専門用語は避け、できるだけ丁寧に、わかりやすく、伝わる言葉で伝えること。
内容の情報量が多すぎるとかえって混乱するため、主訴とつなげながら、ポイントを絞って伝えること。
結果は受検者にとって厳しい内容になる場合もあります。受け取る側の不安や動揺などへ配慮し、受け手がどう理解するか、想像力を働かせて言葉選びに配慮すること。
② 役立つ情報を届ける。
あくまで、結果は受検者の役立つものにならなくてはいけません。単に数値だけを並べるではなく、今後、主訴に対して、どうしていったらよいかの具体的アドバイスを伝え、役立つ結果報告にすること。
健康的に機能している得意な部分も伝えることで、今後の関わりついてのモチベーションにつなげるように配慮すること。
③ 一方的に伝えるだけで終わらず、話し合うこと
心理検査は、検査者が受検者を理解するだけでなく、受検者自身が自己理解を深めることにも大きな意義があります。受検者(やその家族)が、結果について質問をしたり感想を言ったりすることで新たな気づきが得られることもあります。このように、検査者と受検者(やその家族)がお互いの対話を通して、結果についての理解を共に深めるようにすることが大切。
④ 検査の限界点を伝える
結果は、受検者の疲労、意欲、自信などの知能以外の影響もあるため測定値には必ず誤差があること、成長するにつれ変化していく可能性もあること、また、各検査は知能のある特定の側面を測っているにすぎないという限界点を伝え、今回の結果だけですべてがわかるのではないことも伝える。
解答の組み立て方
この問題は「説明タイプ」なので解答の仕方は簡単かと思います。
序論:子どもに知能検査を実施する際の留意点は4点あげられる。
本論:第一に、~~~。第二に、~~~。 第三に、~~~。 第四に、~~~。
(結論はなくてよい)
放送大学大学院について
ここで、放送大学大学院(文化科学研究科 文化科学専攻 臨床心理学プログラム)について触れたいと思います。
数少ない通信制の大学院。働きながら資格がとれるということが大きなメリットですよね。
ただし第2種指定校です。修了してから1年以上の実務経験を経て、臨床心理士資格試験の受験資格が得られます。
通信制ではありますが、実習、演習、修士論文中間報告会は通学しないといけないようです。(放送大学本部は千葉県千葉市美浜区)
2017年度の入試では、募集人数30名に対して受験者が447名。倍率がなんと14.4!!
かなりの人気校です。 😯
英語の試験がないことも人気の理由かもしれません。
- 出願は8月(研究計画書のほかに志望理由書が必要)
- 10月―11月に筆記試験、口述試験があります。
詳しくは⇒放送大学大学院ホームページ
過去問はHPで公開されています。⇒放送大学大学院過去問一覧
おすすめ書籍
受験生にとっては、やや詳しすぎるかもしれないが、買っておいて損はない。必ずといっていいほど必要となるとなる本。本気で知能検査を勉強したい人におすすめ。↓↓↓
フィードバックについての本ならこれ↓↓
まとめ
- 査定という枠組みの中で、知能検査の目的や意義を理解した上で解答すること
- 実施における留意点は、①目的にあった検査の選択②インフォームドコンセント③ラポールの形成④行動観察
- フィードバックについての留意点もおさえる。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
知能検査関連では、そのほかには、
★各検査(知能検査に限らず、ロールシャッハやその他の心理検査)の語句説明問題
★各検査法(描画法、投影法、質問紙法など)の長所、短所、限界点、
★テストバッテリーについて答えさせる問題
★事例問題(事例問題についてはこちらも参照してください⇒【論述対策】事例問題を斬る!何故事例問題は難しいのか?|臨床心理士指定大学院入試対策
などが頻出です。
これらについても、機会があれば記事にしたいと思っています。
次の記事も放送大の過去問からとりあげています。
次の記事は⇊⇊
超頻出!DSM-5で自閉症はどう変わったのか?【放送大学大学院】臨床心理士指定大学院入試対策