今すぐ解いてみるべき!おすすめ東大の過去問【厳選5選】|臨床心理士指定大学院対策

東大の過去問 厳選5





ご訪問ありがとうございます。こんにゃろうです。いやはや、もう8月後半となりました。国公立の臨床心理士指定大学院をめざしている方は、直前対策でがんばっていらっしゃることでしょう。

本番に焦らずに自分の力を出しきる、というのは意外と難しいことかもしれません。こういう時には、どれだけ今まで自分がやってきたのかを振り返り、自分を信じる!ことが大切です。受かりたい思いだけが先走って自分の力が出せない。。。。ってことにならないよう、落ち着いて、自分の力を出せさえすればいいんだ、くらいの気持ちでいきましょう

てことで、早速いきましょう。今日は、東大の問題!です。ここでいう東大とは「東京大学大学大学院 教育学研究科 臨床心理学コース」の入試問題のことです。毎年10倍にもなる倍率の超人気の大学院であります。チャンスは一度のみ。秋入試(9月)のみとなります。

なぜ東大の問題をとりあげたかというと、東大の過去問は、本当に本当に、大事なことがわかっているか??という本質的なところを突いてきて、とてもいい問題だと思っています。臨床心理学の基本的なことを、根本的なところから考える上でも、東大を目指さない人でも解いてみることを超おすすめします。

 

東大というだけで、無理!と思う方も多いことでしょう。しかし、ここではそういう思いはちょっと横に置いておきましょう。

ではどんな問題があるか見てみましょう。(今回は英語は除く専門科目のみについて書いています)

 

出題傾向

 

論述問題6問(2014年度は5問)を試験時間3時間で解く。文字制限はない。

今までの傾向としては

  1. 臨床心理学とは何か?に関する問題(発展の歴史、倫理、専門活動、日本の抱える問題点について等)
  2. 子ども臨床(発達障害や虐待の支援について等)に関する問題
  3. 認知行動療法に関する問題
  4. 家族療法をはじめとするシステム論に関する問題
  5. 質的研究法に関する問題
  6. 統計学や量的研究法に関する問題
  7. その他、セクシャルマイノリティやコミュニティアプローチに関する問題など

が出されていています。

(大学院にいらっしゃる教授が一問ずつ出題していると思われ、東大を目指す人は、来年度もいるであろう教授を確認し、その著書を読みまくれば、問題の解答は自然とわかってくると思います。また東大は研究者養成の色合いが濃いため、統計学や量的研究法、質的研究法に関しては、教員云々に関わらず、バリバリ勉強しておきましょう。)

ところで、私が今日紹介したいのは、

東大を目指す目指さないにかかわらず、トライしたほうがいいと思う問題、本質的なところを突いているいい問題だなぁ、と思うものを私なりに選んでみました。考えれば考えるほど味が出てきます。ぜひぜひやってみてください。

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※注 以下、私なりに考えた解答の方向性を書いていますが、正解を保証するものではありません。読んでいて、あれ?こうじゃないの?ていうのがあれば、こんにゃろうまで遠慮なくご意見お寄せ下さいませ。

「児童虐待の最大の原因は子育て中の母親自身が望ましい環境で育たなかったこと、すなわち母親の被養育体験の貧困さや不適切さにある」としばしば言われる。このことについて臨床心理学的観点からコメントしなさい。(2014年度)

いきなり、虐待に関する問題をとりあげてみました。虐待は今や社会問題となっています。

児童虐待とは、子どもが主に養育者によって心身ともに危機にさらされること。身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの4つがあります。

本来ならば、子供は良好な養育者との関係の中で育ち、愛着が形成され、生涯にわたる安定した心の基盤が形成されます。しかし、養育者から虐待を受けることは、心の中核に深刻な負の影響を及ぼすことであり、その影響は計り知れないくらい大きいことは明らかです。臨床心理に関わる人間ならば、嫌でも関わっていく問題であり、そのことをちゃんと考えているか?を問いかけているのだと思います。

虐待に関する問題はこの2014年度だけではなく他の年度にも類題が出題されています。

この問題では、虐待の原因を問うています。ここで言っている「母親自身が望ましい環境で育たなかったこと」、つまり母親自身が虐待されて育ったために、同じように我が子を虐待してしまうのだ(これを世代間伝達という)、それが最大の原因だ、という考えがある。けどそれは本当か??あなたはどう思うか??と投げかけられています。

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私ならこう答える。

母親が望ましい環境で育たなかったこと、つまり虐待されて育ったために、我が子も虐待してしまうといった虐待の世代間伝達は、児童虐待の原因の1つと考えられるけれども、それだけを最大の原因と考えてしまうことは、母親のみに原因を押し付けることにつながる。

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臨床心理学的視点から「生物ー心理ー社会モデル」に基づき、多角的に述べる。

世代間伝達以外で虐待の原因として考えられる原因は他4つ考えられる。

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①母親側に何らかの精神疾患がある場合(親側の生物的心理的要因)

母親に精神疾患がある場合、十分に子育てに自らのエネルギーが向けられず、ネグレクトをしたり、病気からくるストレスや認知の障害や情緒の不安定さから、良好な親子関係を保てないことが考えられる。

②子供側に発達障害などの問題がある場合(子供側の生物的要因、親側の心理的要因)

子供自身に、ADHDや自閉症などの発達障害をもつ場合、育てにくい特性を持っている場合がある。その育てにくさゆえに、しつけがエスカレートし、親のストレスを爆発させ虐待に至る場合が考えられる。

③母子をとりまく環境に問題がある場合(社会的要因)

経済的に貧困であったり、夫婦関係でのDV、離婚問題、などの母子が危機にさらされ、母子が共にストレスを強くもつような状況におかれている場合にも虐待が発生すると考えられる。

④ソーシャルサポートが欠如している場合(社会的要因)

慣れない子育ては、通常でも多かれ少なかれストレスを生むものであるが、それが孤立した状況で、誰からもサポートがない状況であるならば、母親のストレスを高めてしまい、虐待へと至る場合も考えられる。

以上のように、児童虐待の原因は、親子の世代間伝達がひとつの原因と考えられるものの、それ以外にも様々な要因が絡み合っているため、ひとつひとつのケースを、丁寧に多角的に検証していく必要がある。

 

ADHD(注意欠陥/多動性障害)の子どもたちがその障害ゆえに現実生活のなかでこうむる不利益について、その特徴とからめながら、具体的に5つ以上述べなさい。(2005年度)

 

発達障害に関する問題。この問題はADHDについてですが、他の年度では、自閉症スペクトラム障害についての類題も出されていて、子ども臨床分野において虐待と共に、最も注目されているテーマ。

障害者の立場に立って、障害ゆえに持つ「生きにくさ」をわかっているか?と問いかけられています。

(実は、この問題の前に、ADHDはどのような障害であるのか、特徴を述べさせる問題があり、それに続く問題となっています。)

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私ならこう答える。

ADHDの特徴は3つ。多動性、衝動性、不注意。(例えば、授業に集中できない、行動の抑制がきかない、よく忘れ物をしてしまうなど。)

これらの特徴ゆえにこうむる不利益は5点考えられる。

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①学習のおくれ

集中力の乏しさから、落ち着きがなく、勉強に集中できない傾向をもつ。そのため知識を得ることが難しく、学習が遅れがちになる。

②いじめ、不登校

衝動のコントロールがきかない傾向になるため、学校のルールや約束を守れないことが多い。時には友人に乱暴な動作をしてしまったり、順番が守れなかったりして、集団の中で孤立しがちになる。それが、何らかのきっかけでいじめに発展するケースもあり、いじめが不登校を引き起こすこともある。

③虐待

言うことを聞かない子としてみられ、しつけがエスカレートし、温かみのある親子関係が失われがちになる。

④自尊心の低下

親や先生や周囲から怒られることが多く、自分に自信がもてない。

⑤抑うつ

表面的にはなんとか社会適応をしているようにみえていても、適応すること自体にストレスを感じやすく、生きづらさを感じており、抑うつを引き起こしやすくなる。

 

(※これらは、ADHDの障害を持つ人すべてにあてはまるわけではなく、あくまで傾向です。)

 

 

「これから歳をとるにつれて衰えていく一方だ」と考えて落ち込んでいる成人のクライエントがいたとする。そのクライエントに対してどのように援助することができるか、生涯発達の視点から述べなさい。(2013年度)

 

この問題は、老年期の発達課題について問われている、と私は考えます(あるいは中年期の危機)。また、ここでいう生涯発達の視点とはエリクソンの発達理論であると考えられます。

老年期は、衰え、孤独、死など様々な喪失感に直面する時期であり、臨床的問題が起こりやすいと言われています。これから高齢化社会へと向かっていく日本において、老年期の問題には向き合っていかねばらなず、それに向き合う姿勢を問われているように思います。

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私ならこう答える。

老年期には様々な変化が訪れる。身体的に衰えてくる。女性は、子の自立に伴い、母親としての役割が集結することになる。男性は退職を迎え役割変換を強いられる。また、配偶者や、友人の死にも直面し、孤独感、喪失感を味わう。また、自らの死も意識するようになる。このような状況は、心身症、空の巣症候群、うつ病や自殺の原因にもなりうる。

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老年期では、このような、衰え、喪失、孤独、死に直面しながら、「これから歳を取るにつれて衰えていく一方だ」と絶望的になることが考えられる。よって、生涯発達の視点、つまりエリクソンの発達理論の立場から、老年期の問題としてこの問題について述べる。

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エリクソンの発達理論はライフサイクル論とも呼ばれていて、発達を生まれでから死ぬまで生涯にわたるものとしてとらえている。人生を8段階にわけ、それぞれに経験しやすい発達課題を設定していて、それぞれの段階で、発達課題を乗り越えることで、自我が発達していくと考えられている。

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老年期は最終段階に位置づけられ、今まで獲得的、上昇的であった人生が、喪失や下降へと向かっていく中で、いかに衰えを受け入れ、人生を問い直して自己の安定感を取り戻し、肯定的に生きていくかが課題となる。このような課題を、エリクソンの発達理論では、「統合」とし、それに対する対概念としての心理社会的危機を「絶望」としている。

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老年期は人生の総仕上げの時期であり、死と向き合い、自らの人生を振り返り、意味あるものとしてとらえ人生をまとめることができることができるならば、「統合」が成し遂げられる。

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絶望的になったクライエントに対して、このように、老年期は、衰えではなく発達の総仕上げであるという方向へと支援することが重要である。老年期では、社会的孤独感に陥りやすいためソーシャルサポートの充実などの環境調整も必要であり、また、その人の固有の経験や知に対して、尊重や敬意を払いつつ、一貫した人格の連続性を跡付け、価値づけられるような援助が必要であると考える。

※老年期の発達課題として回答してみましたが、「中年期の危機」としてとらえて書くのもありだと思います。

「カウンセラーはクライエントとのやりとりの中に、自分自身の価値観を持ち込んではならない」と言われている。このことについて、あなたの考えを述べなさい。(2008年度)

 

この問題は、ロジャースの提唱した3つのカウンセラーの態度条件、のひとつである「無条件の肯定的配慮」について問われていると思います。

来談者中心療法においては、人間は潜在的に自己実現傾向が備わっており、カウンセラーとクライエントとのラポールを基盤とした関係性によって、それが発揮され、クライエントの人格が変容していくと考えられています。「無条件の肯定的配慮」とは、そのラポールの形成に必要なカウンセラーの態度条件として、「純粋性」「共感的理解」とともに挙げられているものです。

ここでは、カウンセラー自身の価値観を持ち込んでしまうことは、つまり「無条件の肯定的配慮」が失われること。そうなると、カウンセラーとクライエントとの関係性はどうなってしまうか?を問うています。カウンセリングにおいて最も重要ともいえる姿勢、それがどうして重要なのか?と本質的なところをついた問題です。

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私ならこう答える。

カウンセラーがクライエントとのやりとりの中で、自分自身の価値観を持ち込むことは、無条件ではなく、条件付きでクライエントの存在を認めることである。

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クライエントは、カウンセラーの価値観において望ましいとされた面だけがカウンセラーに受容される。(これは、あるがままに自分が受容されるという「無条件」とは相反するもの

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カウンセラーの価値観において望ましくないことは話さなくなり、話したいことを自由に話せなくなる。

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クライエント自身も、自ら条件づけの受容しかできなくなる。矛盾する感情が統合できないなど、自己概念の歪曲経験の否認、がおこり、あるがままを受容するという自己受容(自己一致)ができなくなる

クライエントは、あるがままの自分が尊重されることを実感してはじめて、自己受容が促進されていくのである。「無条件の肯定的配慮」とは、クライエントのどのような態度、発言、行動をも偏りなく肯定的に受け入れることである。カウンセラーが自分自身の価値観を持ち込むことは、これとは相反するものであり、クライエントの自己受容を促進するものではない。

 

近年、臨床心理学が専門活動として発展するにしたがって、倫理の重要性が強調されるようになっている。臨床心理学において倫理が重要である理由について述べなさい。(2011年度)

 

臨床心理学の倫理の問題は、どの大学院でもよく出されており、頻出問題のひとつです。「倫理上注意しなければならないことは何か?」「守秘義務について述べよ」「倫理的配慮を3つ述べよ」などといった問題が多いですが、この問題では、「なぜ倫理が重要か?」と東大らしく本質的なところをついてきているもので必ず抑えておきたい問題です。

 

臨床心理学の倫理とは、具体的なものに、インフォームドコンセントや秘密の保持などがあり、日本では、日本臨床心理士会が制定した「臨床心理士倫理綱領」に詳細が明文化されています。これを読むと、専門家としてしてはならないことやあるべき姿が書かれています。改めて、これがなぜ必要か?と聞かれると。。はて??となってしまいます。この問題では、倫理がただの規則ではなく、なぜ?を問うことで、臨床心理士とは何か?を本当に本当に分かっているのか?を聞いているのだと思います。

 

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私ならこう答える。

理由は2つ。

①クライエントを守るため。(クライエントとの信頼関係を保証する。)

臨床心理学は心理的問題への援助を目的にする学問である。その心理的問題はクライエントのプライバシーに密接に関わっている。いわば、臨床心理学はクライエントとの信頼関係の上に成り立った学問であるといえる。そのため、専門家が一歩間違えば、クライエントの価値や尊厳を大きく傷つけることになる。つまり、倫理が遵守されないと、この信頼関係が揺らぐことになる。

秘密の保持などの倫理があることで、クライエントが守られ、クライエントは安心して援助を受けることができる。

 

②専門家としての社会的責任を全うするため。(社会に対して、専門家としての質を保証する。)

倫理は、専門家自身の、専門家としてどうあるべきかの自律的な行動規範となるばかりでなく、社会に対して、専門家としての責任を果たすということをを宣言するという意味をもつ。つまり、外部に対して専門家としての質を保証することである。

このように社会に対して社会的責任を宣言することによって、臨床心理学の専門活動は、社会的信用を得ることができる。社会的信用が高まれば、社会の中での専門職としての地位が確立され、より社会に貢献できるようになり、専門活動として発展していくことができる。

 

➡ 東大の下山晴彦先生は、米国や英国のように、日本においても、臨床心理学が社会の中でしっかりと認知され、専門活動として、その地位をしっかりと根付かせ発展させようとされています。倫理を含む専門活動については著書に度々強調して書かれております。東大を受験される方は、この下山先生の考えをしっかりと叩き込んでいかれるとよいかと思います。下記におすすめ著書載せております。

 

おすすめ書籍

虐待関連

発達障害関連

発達臨床心理学関連

カウンセリング関連

東大対策におすすめ


このシリーズは全部で7巻でており、すべておすすめです。下山先生自ら、この本の解説をしている動画があります。

こちらです⇒7)臨床心理学を学ぶ1 これからの臨床心理学(東京大学出版会・下山晴彦 )

東大の問題は毎年、量的研究法、質的研究法からそれぞれ出題されています。このシリーズの中の下記の2冊は必読です。

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