ご訪問ありがとうございます。こんにゃろうです。
早くも11月、大学院入試、秋受験もようやくピークが過ぎる時期になりました。大学院受験は秋受験と春受験と2回チャンスがありますね。これから春受験に勝負をかけようとしている方もいることと思います。
さて、今回は、以前から書こうと思っていた研究計画書について書きたいと思います。
大学院受験を決意したのはいいけれど、何やら研究計画書とやらいうものを書かなくてはいけないらしい。。。
はて?そんなもの書いたことないぞ。。。そもそも研究計画書ってなんだ?と思っている方にむけての記事です。
研究計画書とは?について書いていきます。
では早速いきましょう。
研究計画書の位置づけ
このブログでも度々書いていますが、研究計画書は、入試の合否の判断基準のひとつとなっています。
合否の判断基準とは
研究計画書+筆記試験+口述試験(面接)の3つ。
研究計画書は、出願の際に提出するもので、「私は、大学院で●●のことを研究したい。」という意志を示すものです。筆記試験と同じくらい重要な位置づけとなるため、一定の時間と労力を費やすことは避けられません。出願締切日を頭に入れて、余裕をもって作成を始めましょう。
なぜ研究計画書を提出するのか
大学院側はなぜ研究計画書を提出させるかについては2つ考えられます。
①志望動機という意味合いが含まれている。
私はこういう研究をしたい、こんなところに興味がある、だから、この大学院に入りたい、●●教授のもとで研究したい
このような受験生の意志を大学院側は汲み取って、その大学院で指導可能な研究内容なのかどうかも含めて、合否の判定基準にするわけです。面接試験でも研究計画書について聞かれるのはこのためです。
面接対策についてはこちらの記事を参考にして下さい⇒【面接対策】知らなきゃ損する!面接で絶対に聞かれる質問とは?|臨床心理士指定大学院入試対策
②その受験生が研究に関する基礎的ルールを知っているか、を判断するため。
サッカーをするためにはサッカーのルールを知っていなければなりませんね。
大学院は研究する場所です。研究をするためには、研究のルールは知っていなければなりません。受験生がその基礎的なルールを知っているか否かを判断するために研究計画書を提出させるのです。
でも研究計画書を書いたことのない人は、そんなルールなんて知らない?!っていう方がほとんどではないでしょうか。このあたりを、これから説明していきます。
研究とは
研究のルールを知るためにはまず、研究とは何か?から考えてみたいと思います。
研究ってなんでしょう?
私たちは今まで小学生の頃からたくさんの勉強をしてきました。
「勉強」と「研究」違いはなんでしょう?
<勉強>人類がこれまで積み上げてきた知見、つまり既知のものを身に付けること
<研究>人類がこれまで積み上げてきた知見に新しい知見を積み上げる。つまり未知の領域に足を踏み入れること
ということは、研究には勉強が必要だが、いくら勉強しても研究にはならない、とも言えます。
研究のイメージがなんとなくついてきたでしょうか?
研究とは、
①まずは人類がつみあげてきた知見をしっかりと知ること
(人類がこれまで積み上げてきた知見のことを「先行研究」と言います。)
②次に、自分がさらにそれに、新たな発見を積み上げる
といえます。さらに、
例えば「●●のことをおもしろいから研究しまーす。」と言っても果たして意味があるでしょうか?
研究は費用も時間もかけて行うものです。研究は個人的な興味のためだけであってはなりません。
その研究が社会に役立つもの、でなくてはなりません。つまり研究の意義です。
③その研究が、どういう点で社会に役立つのか、といった意義があること
上記の①②③の3点が「研究」の重要なポイントとなります。
研究計画書とは?
ここからいよいよ、研究計画書を書く上でのルールの話になります。
「百聞は一見にしかず」とも言うように、心理学論文を読んだことがない人はまず、2~3個実際の論文にざっとでよいので、一度見てみることをお勧めします。
CINII(国立情報学研究所)のページへ行って、興味のあるキーワードで検索してみてください。(例 「いじめ」「不登校」「自殺」など)
そうすると沢山の論文がずらっと出てくるので、各論文のリンクボタンから、PDFに飛んでください。
[機関リポジトリ][J-stage][DOI]などのリンクボタンは無料で読むことができます。一度読んでみるとだいたいこんなものなんだというものがわかってきます。ここでは、細かい内容をすべて理解する必要はありません。だいたいこんなもんなんだーと思う程度でよいので読んでみて下さいね。
CiNiiでのネット検索については、こちらの記事に詳しく書いています⇒【研究計画書】研究テーマの選び方ー何から始めてよいかわからない人へ|臨床心理士指定大学院入試対策
読んでみるとわかると思いますが、心理学の論文は以下の構成となっています。
②要約 ③結果 ④考察は、研究をした後でないと書けないので研究計画書では省かれます。
従って、研究計画書は
この形式を守って書く事が、研究計画書の大枠のルールと言えるでしょう。
では、もう少しこれらひとつひとつを、丁寧にみていきましょう。
注意)質的研究法は、仮説を生成していく手法のため、質的研究法を選択する場合は仮説は省かれます。
1、タイトル
タイトルは、見るだけでその研究テーマの具体的なイメージができるようにします。
例:
- ソーシャルサポートの学校ストレス軽減効果に関する研究
- 小中学生の一年間にわたる不登校傾向の変化とソーシャルサポートとの関連
2、問題と目的
この部分は、その研究の柱となる、なぜこの研究をするのか、について書いていきます。
↓↓
しかしこういうことがまだ明らかにされていない。だから明らかにしたい。(先行研究の限界)
↓↓
それについては先行研究から考えると、こうこうこういうことが言えるのはないだろうかと推測される(仮説)
本研究は、この仮説が正しいかどうかを検証することを目的とする。(目的)
↓↓
なぜならば、このことを明らかにすることで。。。。ということに役立つからである(社会的意義)
といった流れで書いていくと、論理的にすっきりしたものにできます。
留意点
1)書き始め
書き始めは、最初に導入として、その研究テーマが現在どのような現状に置かれているか、どのような社会問題があるか、を書くとよい。そうすることで、この研究の意義を強く示すことができます。
例)近年, 中高年の自殺が社会問題としてとりあげられている。●●年代から増加を示し●●年には自殺者が・・・
2)先行研究について触れる場合は、必ず過去の論文の引用を入れること。
どういう研究がなされ、どういうことが言われてきているのか、を単に書くだけではいけない。言われているからには根拠となる過去の論文を引用しなくてはいけないです(引用のないものは「剽窃(ひょうせつ)という違反行為となります)。
例) 社会人にとってソーシャルサポートがストレスの軽減に重要な役割を担うことは, これまで先行研究から示唆されてきている(佐藤,2016)←引用先を必ず明示。
●●●について, 三上(2009)は『▼▼▼』と述べている。
3、方法
この部分で必須なのは
①対象者・・誰に対してデータをとるのか
②手続き・・・どんな方法でデータをとるのか。面接?質問紙?実験? 質問紙の場合は尺度名などを明記
※具体的な統計的検定の種類といった分析方法については、必ずしも記載しなくてよいとされています。それよりも、重要なのは、この方法(や仮説)が研究目的にきちんと見合ったものになっているかどうかです。
例)研究対象者は男女の大学生約200名とする。調査方法は質問紙法とする。質問紙に含まれる心理尺度は下記のとおりである。
- 親子関係尺度(山本ら, 2012)
- 自尊感情尺度の改訂版の日本語版(安藤・田中, 2003)
(4、仮説)
仮説は「問題と目的」の中に入れてしまってもよく、その研究内容や構成によってまちまちといえます。
ここに仮説を置く場合は、こういう対象に対して、こういうことをしたら、こういう結果が得られるだろう、ということを書きます。
「予想される結果」と表現される場合もあります。
注意)質的研究法は、仮説を生成するという手法(仮説を立てて検証していくのではない)のため、質的研究法を選択する場合は仮説は省かれます。
5、引用文献
研究計画書の最後には、研究計画書の中で引用した論文や文献の一覧を明記します。ここでは、著者の名前のアルファベット順(A→Z)に並べていくのがルールです。
例)
- 木村石子 (2008). ●●のストレスについて 心理学研究, 21, 221-231.
- 山本花子 (2005). ▼▼▼に関する研究 心理学研究, 26, 75-97.
心理学論文の書き方の決まりについての詳細は→日本心理学会 投稿・執筆のてびき に詳しく載っています。細かいことを確認されたい人は一度見てみてください。
また、このようなルール的なことや日本語表現、論旨の展開について、こちらの記事でも詳しく説明しています。⇒研究計画書|ありがちなNGパターン10選【絶対保存版】臨床心理士指定大学院入試対策
研究計画書はどのくらいで書き上げられるのか
ここまでで、研究計画書についてなんとなくイメージができたのではないかと思います。
が、次に気になるのは、どのくらいで書き上げられるのか?ということだと思います。
これは人によりけりだと思います。ある程度時間があって、受験のみに集中できる方と、働きながら受験を目指している方とでは違うと思いますし、研究テーマがすでに決まっている人と決まっていない人でも違うだろうし、統計学や研究法の知識がある方とそうではない方とでも違ってくるので一概には言えないです。
私の場合はというと、1ヶ月で書き上げました。その期間は研究計画書以外のことは全く何もできなかったです。また、私の受験仲間の友人たちに聞いてみると2-3ヶ月はかかっている印象です。受験勉強に、一日のほとんどの時間を費やせる人でこれくらいなので、働きながら受験を目指す方はもっと時間が必要となってくることでしょう。
研究計画書を仕上げるための最大の山場は、沢山の論文を読むことです。多くの論文を読まなければ、先行研究でどんなことが明らかになっているのか、明らかになっていないかを知ることができないからです。
また、最初からアタリ論文(自分のやりたい研究にぴったりの論文)に出会えることはなく、沢山読んでこそ、見つけることができるのです。社会人の方など日々忙しい人は、できるだけ早く研究計画書に取り組むことをお勧めします。
全体の受験スケジュールをふまえ、いつから研究計画書に取り掛かるとよいかについては、こちらの記事にも書いています。⇒臨床心理士指定大学院|受験スケジュールで把握すべき最も重要な事
また、志望校選びと研究計画書は密接な関係があります。そのあたりのことはこちらの記事を参考にして下さい⇒効率2倍!臨床心理士指定大学院志望校選びのための情報収集
研究計画書に欠かせない論文収集は、ネット検索だけでなく図書館を利用する方法もあります。それについてはこちら⇒国立国会図書館の利用法はこれだ!研究計画書の質を100倍アップさせよう!|心理系大学院入試対策
研究計画書作成にあたって、個別サポートを受けたい方は⇒初めてでもやればできる!受かる研究計画書完成講座|公認心理師・臨床心理士大学院入試対策
おすすめ書籍
合格した研究計画書の実例が載っていて、それらを丁寧に添削していくプロセスが書かれており、作成のポイントがよくわかります。入学後の修論作成にも役立つ。
まとめ
- 研究するためには研究のルールを知らなければいけない。
- 研究とは、先行研究に新たな知見を加えること。また、社会的意義がなくてはいけない。
- 研究計画書の形式は①タイトル ②問題と目的 ③方法 (④仮説)⑤引用文献
- ②の問題と目的では、先行研究で明らかになっていること→先行研究で明らかになっていないこと→研究の目的や仮説→本研究の社会的意義 の順で書くとわかりやすい。
- 先行研究について述べる際には必ず引用を明示
ここまで読んでみていかがでしたでしょうか?
なんとなく、研究計画書がどういうものかわかったけど、
でも、どうやって書いていったらいいの?
何からはじめていいんだろう?
という不安が残ってしまったかもしれません。そこで、次回は、研究計画書の作成は、何からはじめたらよいのか、研究テーマをどのように決めたらよいのか、その際の注意すべき点、論文をどのように収集していったらよいかなどについて書いていきます。
次の記事は↓↓
【研究計画書】研究テーマの選び方ー何から始めていいかわからない人へ|臨床心理士指定大学院入試対策