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いつも読んでくださってありがとうございます。
これを書いているのは2020年の2月なのですが、私自身、心理士(心理師)になって2年目になろうとしています。日々、試練は多く、自身の臨床スキルアップに励む毎日です。
さて、今回は、臨床現場でよく行われている「親子並行面接」をとりあげたいと思います。
子どもを対象とする臨床の介入法として、必ずといっていいほど行うものです。
また、私自身、大学院に入って、実習機関で初めてケースを担当したのが、親子並行面接の子ども担当でした。
このように、大学院の実習では、実習生(M1)は子どもを担当し(プレセラピーになる場合が多い)、親面接は、先輩または先生が担当するということが非常に多いです。
こういったこともあって、「親子並行面接」は大学院入試に出やすいトピックですのでしっかりおさえましょう。
とりあげる過去問はこちらです。
子どもに関する心理相談で親子並行面接を行うことの意義と留意すべき点について述べなさい。 (学習院大大学院 2011年)
親子並行面接とは?
子ども(主に学童期)の抱える問題を主訴として訪れた親子に対し、両者それぞれに別々のセラピストが担当し、同時並行的に心理面接を行うもの。
部屋は別々で行う。
子どもの抱える問題とは、たとえば、不登校やいじめ、発達障害などです。
子どもが自ら相談にやってくることは、まずありません。親が子どもを連れてくることがほとんど。
通常は、初心者のセラピストが子どもを、熟練のセラピストが親を担当して、相互に連携をとりあいながら、進めていきます。
親子別々に面接を行うことで、それぞれの担当者が、それぞれの面接に専念し、丁寧に関わっていくことができる点で有効です。
インテーク面接の流れ
(インテーク面接とは、クライエントに対して最初に行われる面接のこと)
親が子どもを連れてくる
⇊⇊
子どもには、子どものインテーク担当者がつき、親には、親のインテーク担当者がつき、別々にアセスメントを行う。
⇊⇊
最後に、子ども&親+子担当&親担当で合同の形でインフォームドコンセントを行い治療契約を結ぶ。
援助方針を理解して同意するのは、子どもではなく親となる。(親子別々にインフォームドコンセントを行う場合もある)
おさえるべきポイント
クライエントはあくまで子どもである。親ではない
子どものこういうところが困っている、というような子どもの問題を主訴としている点を忘れないように。つまり、子どもが主役!子どもへの援助が主軸となる。
親(家庭)は、子どもの環境である。
子どもは親に依存しなければ生きていけない。子ども自身が環境を変える力には限界があるため、子どもを支える手段として、親面接を行う。
したがって、親面接には、子どもをとりまく環境を調整するという意味合いが含まれる。
子どもにプレイを行う理由←←←ここ重要★
子どもは心身機能が未分化。自我の発達も未熟。
⇊⇊
自らの苦痛や気持ちを言語化することは難しい。
また、子ども自身が苦痛や気持ちに気づいていない場合も。
⇊⇊
よって、プレイという非言語手段をとる。プレイの中での子どもの表現やセラピストとの関係の取り方など、行動観察を通してアセスメントを行う。
親子並行面接の意義
情報の収集(情報提供者としての親)
子どもの問題には子ども自身の性格傾向だけでなく、背景となる家庭や学校の環境要因の影響が大きい。生育歴なども含め、それらの情報を親から得ることができる。
治療関係の維持(共同支援者としての親)
子どもを面接に連れてくるのは親である。親のモチベーションがなくなれば、子どもへの支援はストップしてしまう。親面接をすることで、子の面接に対する親の肯定的理解を得ることができる。
親の心の安定が、子によい影響を及ぼす
親自身が抱える苦悩に、セラピストが共感的に寄り添うことで、親自身が子どもへの思いや家族のありようを見直すことができる。
親の子どもに対する態度や親自身のパーソナリティの変容が、子どもの治療に効果を及ぼす。
留意点
親に対する受容と共感
親は子育てに関して、自分の育て方が悪かったのではないか、という強い自責感を持っていることが多い。面接の場が責められる場にならないよう配慮する。
セラピスト間の連携
親担当者と子担当者が情報や援助方針を共有し合い、しっかりと連携すること
担当者が別々であると、それぞれの面接が深まりやすいというメリットがある一方で、互いの考え方や治療観などの違いによって、治療方針がぐらつきやすいという面があります。そういったデメリットを軽減するために、両担当者の密な連携は必須となる。
親を「クライエントとして」ではなく、あくまで「親として」みる
親面接においては、親自身の育ってきた歴史、自身の親子関係、夫婦関係といった個人の問題へとつながり、個人の心理療法の場になってしまいがちである。
しかし、あくまで子どもへの援助が主軸であるため(目的は子ども自身の心理的問題の改善)、親の機能をサポートするという姿勢からはずれないよう配慮する。
親を「クライエントとして」みる場合
親の個人療法が必要な場合(親を「親として」ではなく「クライエント」としてみる場合)は、子どもとは別の新たな治療契約を結ぶことになる←←←ここ重要★
一応ここまでで、この過去問には解答ができるかと思います。
が、さらに、次のこともぜひぜひ頭にいれておきましょう。
必ずしも親子並行面接となるとは限らない
学童期の子どもの臨床では、当たり前のように親子並行面接を行う流れが定着しているのですが、実は、状況によっては、必ずしも親子並行面接でなくてもよいのです。
セラピストと親子の会い方によって様々な面接形態があります。
タイプとしては以下の条件で別れます。
- 親子のセラピストを別々にするか同一にするか。
- 別々の部屋で行うか、同席で行うか、など。
メリット | デメリット | ||
親子並行面接 | 別々のセラピストが担当
別の部屋で行う |
親子はそれぞれ自分の担当者がいることで安心する
それぞれの面接に専念し丁寧に行える それぞれの秘密保持の度合いは高い |
担当者同士の情報共有が不十分であったり、方針の不一致があると面接に影響する |
親子合同面接 | 別々のセラピストが担当
同室で合同で行う |
分離不安が強い時に有効。
親子の関わりを直接観察できる。
|
担当者同士の不一致が面接に影響しやすい
|
親子同席面接 | 1人のセラピストが親子両方を担当
同室で親子同席で行う |
親子の関わりを直接観察できる
セラピストが一人なので、援助方針に一貫性が保てる |
親子間の中立を保つのが難しい |
親子分離面接 | 1人のセラピストが親子両方を担当
曜日や時間帯をずらして設定し、親子別々に行う |
それぞれの面接が深まりやすい
セラピストが一人なので、援助方針に一貫性が保てる |
守秘や中立を保つのが難しい
セラピストの負担大 |
このように、面接形態はいろいろあり、クライエントの問題に即して、適切なアセスメントを通して、最も適した形態を選択することが重要。
親子別々のセラピストがつくのではなく、セラピスト一人が親子双方を担当したほうが、うまくいく場合もあるのです。
ということで、セラピストは、どの面接形態でも対応できるようにしておくことが望ましい。
親子並行面接の歴史的源流
子どもの臨床を行う場合の、親面接の重要性は昔から認識されていました。
しかし、それを明確な形として強調したのは、フロイトの娘のアンナフロイト(Freud,A.)といえるでしょう。こういった歴史的な背景も覚えておきましょう。
アンナフロイトは子どもを対象として児童分析を提唱したことで広く知られていますね。
一方で、アンナフロイトは、子どもをとりまく環境要因を重視し、積極的に周囲の大人や環境に働きかけ、特に両親の協力は不可欠であると考えた。アンナフロイトの親面接は、子どもをより適切に支援するための情報収集と親ガイダンスの場、としての役割を持っていたのです。こうして親子並行面接の基礎を作ったのです。
まとめて覚えておこう。どれも重要。
【補足】「意義」ってどういう意味?
論述問題では、よく「意義」が問われますね。
「意義」ってどういう意味??って思いませんか?
例文)
- 今日のイベントは参加することに意義がある。
- エジソンの発明は歴史的意義がある。
- 価値がある。
- 意味がある。
- 重要性がある。
- 社会的に役立っている
といった意味にとらえるとよいかと思います。
今回の問題は、「親子並行面接を行うことの意義」を問われているので、
- 親子並行面接を行うことにはどんな価値がありますか?
- 意味がありますか?
- どんなふうに(臨床に)役に立つのでしょうか?
と翻訳できますね。
おすすめ書籍
⇊⇊子育ての中で母親は何故不安をおぼえるのか、世代を超えて受け継がれる親子関係の病理とは?鋭い分析がちりばめられており、思わずハッとさせられる。母子臨床に興味のある人には、ぜひおすすめ。
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ここまでお読みくださりありがとうございました。
参考になれば幸いです。
さて、次の記事は⇊⇊
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