ご訪問ありがとうございます。こんにゃろうです。
トルコとシリアで大きな地震が起こりましたね。映像をみていると、阪神淡路大震災や東日本大震災の悪夢がよみがえってくる方も多いのではないでしょうか。
さて、今回は「危機介入」についての過去問を取り上げ、考えていきたいと思います。
災害や事件など、日々、予期せぬことが起こります。大きな災害や事件の場合は、大きな衝撃がもたらされ、コミュニティ(学校、地域、国全体など)は混乱状態に陥ります。
そういった危機状況の中で、いちはやく心のケアを行い、日常を回復するための介入をしていくことを「危機介入」といいます。大学院の入試には頻出用語となります。
近年は、災害支援に関する社会的な意識も高まってきていますし、今後大学院入試での出題頻度は高まってくると予想されます。
心のケアといっても、危機介入は、カウンセリングとは大きく目的、内容が異なります。
おさえましょう。
危機介入の理論と実践について、通常の心理療法やカウンセリングとの相違にも言及しながら説明しなさい。
(立教大学大学院 2005年度)
【危機介入の理論と実践】
〇危機介入とは
危機状態にある人やコミュニティに対して、その問題発生状況に対する的確な理解に基づいて、迅速かつ集中的、効果的に働きかけて危機から脱出を促す心理社会的援助法。
〇「脱出」「回復」という点が重要。
「危機状態から脱出すること」「元の均衡状態に回復させること」を目的とする。
〇「現実的な解決」「短期間集中」「指示的」という点が重要。
・内面に深く入るのではなく、直面している課題を中心に、具体的で現実的な解決をめざす。そのために心理臨床家は指示的に関わる。
・短期間に集中的に援助。迅速さと適切さが求められる。
〇終結は、開かれた終結という形をとる。
当面の平衡状態が回復したと判断されたら終結とする。しかし、今後も危機が生じたり、不安になったらいつでも援助ができることを保証する。
〇コミュニティアプローチという点が重要
・多職種連携を中心として、コミュニティの活用可能なすべての援助資源を動員させる。
・心理臨床家は、クライエントに直接関わるというより、周囲の人々へのコンサルテーション的な介入が中心となる。
〇ポジティブに捉えるという点も重要。
安定した状態が打ち破られるということは不安や危険もあるが、一方で、コミュニティ全体の援助力が向上するといったポジティブな面が強調される。
心理療法やカウンセリングとの相違
危機介入 | 心理療法&カウンセリング | |
対象 | 危機介入状態にあるクライエントとコミュニティ (個人と環境) | 心の問題を抱えたクライエント (個人) |
目的 | 個人やコミュニティが危機状態から脱出すること、均衡状態にもどすこと。 | クライエントの内面的、全人的成長を促す。 |
方向性 | クライエントに直接関わっている身近な人(家族や地域の人など)へコンサルテーション的介入が中心となるため、間接的なアプローチとなる | 直接的なアプローチ |
介入期間 | 短期介入(1-6週間に5回程度とされる)。 迅速さが重要とされる。 | 長期 |
心理臨床家の姿勢 | 具体的で現実的な問題解決を行うため、心理臨床家は、指示的に関わる。 | 非指示的 |
※補足
もし、共通点を述べなさいと問われたら…
・心理的苦痛の軽減、社会適応を促す。
・受容、共感を中心にしたラポールを形成した上で支援する。
・生物心理社会モデルに基づき、多角的に問題と状況のアセスメントを行う。
・アセスメント➡援助方針の策定➡介入といったプロセスをたどる。
・クライエントの変化の可能性を信頼し、機能している側面や肯定的側面へ目を向ける(内的資源の活用)
などがあげられるかと思います。
お役に立てば幸いです。