深刻化する8050問題、ひきこもりは何故おこる?|「ひきこもりの家族関係」を読んで【おすすめ本レビュー】

      2019/05/03

ひきこもり

ご訪問ありがとうございます。こんにゃろうです。

今回は、本のレビュー記事になります。

いつも受験対策のことをメインに書いていますが、こんな記事もあってもいいかなと思い、今回は、最近読んだ本で、心の底からおススメしたい本について、じっくりと書いてみたいと思います。

 

紹介したい本はこちら

「ひきこもりの家族関係」田中千穂子著(講談社新書)

 

8050問題というのが社会的問題になってますね。

ひきこもりの50代の子どもを、80代の親が面倒をみている状態のことをいいます。

以前は、引きこもりといえば若年層のイメージが強かったけれど、

ひきこもりが長期化し、いまや、その世代が中高年となり、親が高齢となり、生活費や介護に関してなど問題が深刻化しています。

内閣府が、2019年3月29日に発表した調査では、

40〜64歳までのひきこもり当事者の推計人数が約61万人。40歳未満の約54万人を上回ったのだそうです。(驚!)

ひきこもりはどうして起こるの?なぜ?

この状態は一体なんなの??

誰しもが、いまだに、よくわかっていないのではないでしょうか?

 

この本は、初版が2001年で、ひきこもりが注目され始めたばかりの初期の頃に書かれた本です。今から約20年前ですが、ひきこもりの本質に迫る内容だけに、2019年の今の時代でも、全く時代錯誤はなく、

むしろ今こそ本質を深く考えていかねば、という思いにさせられる本です。

 

著者は、田中千穂子。長年、精神科クリニックに臨床心理士として勤務。東京大学大学院教育学研究科教授を経て、現在は学習院大学教授です。肩書はすごいですが、この本は、素朴な一人の心理臨床家の立場から書かれています。

 

ひきこもりはなぜおこる?一体ひきこもりって何なのか?ということについて、実際の事例を紹介しながら、実体験に裏付けされて書かれたものだけに、1ページ1ページ、心に刺さる言葉があります。

家族との関係、特に親子の関係性の歪みという視点から、書かれています。

こんな人におすすめ

  • ひきこもりに悩むご家族の方
  • ひきこもりに苦しむ当事者
  • ひきこもりに携わる支援者
  • 現在子育てをしているお母さんお父さん

何かしらの気づきと解決のヒントを与える本であることは間違いないです。

それでは少し内容を紹介していきます。

そもそも、ひきこもりはそんなに悪いことなのか?

まず、前提として、

ひきこもりはそんなに悪いことなのか?という問いから始まります。

子どものひきこもりは親を慌てさせます。

これまで様々な事件で、事件をおこした当事者が、長期的なひきこもりを呈してきた人であったことから、「ひきこもりは悪いこと、早期に直さなければならない」と捉えられがちです。

わが子がひきこもりになれば、なんとか社会に復帰させなくては!もとのレールに戻そう!戻そう!と親は必死になる。

果たして、それが根本的な解決になるのか?と、著者は問題提起をしています。

 

ひきこもりは、その子どもたちが人生を賭けて訴える心の叫びである。

 

ひきこもりという行動=心の叫び と捉えているところに注目したいです。

その行動によって、子どもは親に何を訴えているのだろうか?

子どもたちの心に一体なにがおこっているのだろうか?

その、心の叫び、心からのメッセージをないがしろにしては解決はありえない、と著者は強調をしています。

親がさせたいと思う方向へ強引にもっていくこと(中略)そのいたずらに「脱線した存在」を正常な形に戻そうとすることは「ひきこもり」をつくりだしている問題を軽視することであり別の形の問題行動が起こって、同じ問いかけが繰り返されるだけである。

 

では、ひきこもりを通して、子どもは一体何を訴えているのか?

 

ひきこもりの子どもたちは、自分が人とうまく関われないことに苦しみ、もがいている。

人とうまく関わる…つまり人との関係づくりがうまくできない。

(「関係性の根が病んでいる」と著者は表現しています)

 

その原点は乳幼児期にさかのぼります。

人間の人との関係性は、親子関係が基盤となって育っていきます。

つまり、発達のスタートラインにあるところの、親との関係性の在り方が、望ましいものではなかった場合、それ以降の人生で、人とのよりよい関係を形成し豊かに育てていくことが難しくなっていきます。

つまり、ひきこもりは、人と良好な関係を築くための基礎的土台が欠損した状態。その土台がしっかりしていないから、外に飛び立てない。

だから、家族との関係性そのものに問題があり、それを変えようとして、ひきこもりがおきる。

 

ひきこもりという行動をおこすことによって、

お母さん、私に、きちんとむきあって!

もう一度親子の関係性を見直して、私の基礎工事のやり直しをしてほしい!と叫んでいる。

親がここにきちんと向き合わなければ、子どもは基礎力のないままに、いつまでも社会に巣立っていくことはできない。

よく、その道の専門家を探し、あとはその先生に任せれば安心だからと、「よい先生(治療機関)探し」を親の仕事と勘違いしている親御さんがいます。私流の言葉でいえば、それは「親の手抜き」でしかありません。子どもは親にはしっかりと向き合ってほしい。自分たち家族の問題として一緒に取り組んでほしい、のではないでしょうか。

成長

決して親の批判をしているわけではない。親は親でそうせざるを得ない理由があった。その理由とは….

子どものひきこもりは、親のせいと言っているのではないことに注意してください。

著者は、なぜ、親がそうならざるをえなかったのか、歴史的な視点で迫っていきます。

ひきこもりという現象は、その子供の親世代の生き方、育ち方の問題が深く影響をおよぼしている。

それは、「親」と「親自身の親」との関係性に端を発する。

つまり、

されたことが繰り返される(これを「世代間伝達」と言う)

 

親が、親自身の親との関係ををもう一度問い直す時、

そこからみえてくるものは、親自身の心の中の欠損感

いきなり欠損感てなに?と思ったかもしれませんが、時代の流れにそった著者の仮説を読んでいくと、納得できるものがあります。



日本人の欠損感がひきこもりを生み出した

 

◇戦後の混乱期を生きてきた人たち(第一世代)

戦後の混乱期を生きてきた人たちを第一世代とすると、彼らは戦後の復興の担い手。彼らのおかげで戦後、高度成長期において、日本は、経済的な豊かさを手にいれることができた。

しかし敗戦は、日本人の「心の中心軸」を失わせる衝撃的な出来事だった。それまで正しいと信じてきたことすべてが間違いだったと突然宣言され、何を信じればよいか分からない方向喪失状態に放り出された。

心の軸をうしなった日本人は、それでもそのことを顧みる暇もなく、混乱した時代の中で家族が生き延びるために、必死に経済的な豊かさを手に入れていった。そのおかげで、私たちは物豊かに暮らせるようになった。

………しかし、心の存在がおいてきぼりになってしまっていた……….

明らかに成果が目にみえるもののみが評価の対象となり、目にはみえない、言葉では表せない「察する心」を失ってしまった。。。

つまり、経済的には豊かになったけれど心が貧困になった…

その中で育てられたのが第二世代。

 

◇第二世代(本の中では「今の40代50代」と表現されているので、2019年現在の60代ー70代ということになる)

この第二世代は、経済中心主義のなかで、心がおいてきぼりになった状態で育てられ、なんか足りないという欠損感を抱きながら成長してきた。

そして、この世代が親になったとき、(子どもは第三世代)、

心の欠損感を、欠けて飢えたものを補おうとして子育ての過剰なのめりこみがおこった。

子どものために良かれと思うことはなんでもやるというように…

 

「子どものため!」「子どものため!」と、異常なまでの親子一体となって取り組む、お受験戦争がその象徴としてあげられます。

でもこれは子供のためなんだ、と親は思っているけど、

本質は親の自己満足のための(欠損感を補うための)、のめりこみにすぎない

当の子どもの心を置き去りにした親自身のための行動なのだ。

その結果、自分が良いとおもったことを子どもに押し付ける、という形で子どもの心に過度に侵襲してしまった。

親の意のままに子どもをコントロールするという形の子育てというわけだ。

こうして、幼少期から親からの侵襲を受けすぎて育ったのが第三世代。

教育まま

◇第三世代(本の中では「若者たち」と表現されているが、2019年現在の40-50代にあたる)

親の期待に合わせて良い子を演じながら成長し、

いやな部分も無理して親にあわせて我慢し、本当の気持ちを抑えながら成長してきた世代。

そして、ひきこもりが増加。ひきこもりは、ついに、この生き方に疲れてしまった状態。

ひきこもりは、

お母さんに、これまで、無理してあわせてきたんだよ、それをわかってくれていた?という親へのメッセージ

おかあさんどうして私のこころをわかってくれないの?

おかあさんは私のことを見ていてくれなかった。

私のすべてを丸ごと受け止めてほしい。

私は自分が何もない。苦しい苦しい。助けて。

いい学校へ行くとか、単位をとって普通に卒業するとか、そういう目にみえるものが大事じゃないのじゃないの、見てほしいのは私のこころ。

という叫びが、ひきこもりの心の叫びである。

親子

ここまでいかがでしょうか?

私はすごく本質をついていると感じました。私自身が第3世代なので。表面上は大事に育てられているようにみえても、内実は、親の期待に沿うように自分を無にして生きてきたのかもしれません。

では、解決の糸口はどこにあるのでしょうか?

親子間の関係性のつむぎ直しが、解決の糸口

親自身がその親との関係性を見直し、自分の子どもの心からの叫びにしっかりと向き合い、

もし、親がこれまでの自分たちの子どもへの対応を間違っていた、あるいは何かが足りなかったと感じるのであれば、そこからやり直せばよい。と著者は言っています。

そうすることによって、家族そのものの変容していき、ひきこもりという行動が、本人と家族におって意味あるものとなっていくのだと。

というか、意味のあるもにしていかなければいけないということです。過去は未来のためにあるのだから。

過去を悔いることは、そこに留まっている限り、先に開かれていくことはありません。そこを出発点として、こどもの新たなる関係性の世界にはいっていけばよいのです。(中略)

人生のなかで起こる出来事のうち無意味で無駄なものはなにひとつありません。

 

しっかりと傷つくことの大切さ

ひきこもりを呈している人は、傷つきやすく、ストレスに対する耐性が極端に弱いという傾向があります。

親は、子どもを愛するがゆえに、子どもを過剰に守ろうとし、子どもが傷つくことを遠ざけてしまい、その結果、心ならずも挫折から立ち直る体験、つまり傷つきを修復していく力を育てる機会をも奪ってしまうということがおこりがちです。

でも、実は、子どもを過剰に守るという行動には、親自身の傷つくことへの恐れがあるのです。

子どもが傷つくことは自分が傷つくこと。だから耐えられない。つまり、親自身が傷つきたくない。だから「こどものために」という美名のもとに、ひそかに自分を守ってしまう。そこにはすり替えがありごまかしがあるのです。

親自身も傷つくことが怖い

⇒だから、子どもを過剰に守る

⇒子どもが傷つきから立ち直る力が育たない

こういったことも、ひきこもりのの背景要因として指摘しています。

傷つくことはそんなに悪いことなのか?とも著者は問いかけています。

私たちは、ストレス=悪い物と決めつけ、それを取り除くことばかりに懸命になっている。

しかし、私たちは、傷つき合いながらお互いに理解し、傷つくからこそ、相手の気持ちを理解したり、優しさが生まれたり、心理的に成長できるのではないでしょうか。

もしも私たちが子どもたちの傷つきやすさを問題にし、子どもたちの耐性を育て、精神的なたくましさを身につけさせていこうとするのであるならば、私たちおとながまず、傷つくこと、傷つけられることに対する自らの恐れを自覚し、しっかりと傷つきをひきうけていこうとする心理的な構えをもつことが必要でしょう。

傷つくことを恐れないで、避けることなく、人と関わり続けていくことが、私たちの心を何倍にも豊かにしていくのですね。

令和になって思うこと

ここまでで、レビューは終わりです。

さて、この本の内容が20年前に書かれたものとして考え、今の時代にあてはめると

8050問題の50代はこの第3世代にあたります。これだけひきこもりが長期化したのは、いまだに、出口の見えない渦の中に身を置き続けているということではないでしょうか。

私も第3世代ですが、ひきこもりとは無縁であっても、他人事ではなくて、時代が生んだ危うさとして、我が事のようにとらえていかなければいけないと思うんです。

そして、時代は令和へ移ろうとしています。第3世代に育てられた子どもたちは今の20代。第4世代になりますね。令和の子供たちは、第5世代となっていきます。

少子化、核家族化、地域のつながりの希薄化によって、子育てが、ますます孤立化していっているように感じます。子育てでわからないことがあったら、すぐにスマホのGoogle先生に聞けばいいのですから…..そして、合わない人とは付き合わなくてよいといった、自分本意な選択で、親自身が、子どもとともに、傷つきから避けるように生きてはいないか、と懸念を抱いています。

この本を読んで、ひきこもりを、戦後の日本社会の高度成長期の影になっていた部分、見落としてきた部分の一つの現れであるという、歴史的な捉え方は、とても大切な視点だと思いました。

このような視点から考えると、ひきこもりを単に困った現象、問題行動として、短絡的に考えるのではなく、自分たちの日本社会が生み出した、歴史的な心の問題としてひきうけることができます。そして、その構えが、これからの時代の、解決の糸口になるのではないかなと思いました。


実は、先ほど調べたら、この本は現在は中古しか出てないようでした。がーん…汗汗

講談社さんに、ぜひぜひ増版をお願いしたいところです。

本当に、すごくいい本なので、中古でも、図書館ででも、ぜひぜひ読んでみてください。

他、ひきこもりに関する書籍としておすすめをあげておきます。

今回は以上になります。ここまでお読みくださりありがとうございます。

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